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Orthodontic anchorage screw

インプラント矯正治療

歯科矯正用アンカースクリューを用いた治療(インプラント矯正)とは?

インプラント矯正とは、「歯科矯正用アンカースクリュー」と言う小さなスクリュー(ネジ)を写真のように歯ぐきの骨の部分に埋入し、歯を動かす時の固定源として用いる方法です。

「インプラント」という名称が良くないのかもしれませんが、歯がなくなった後に歯の代わりとして埋め込む「デンタルインプラント」とはまったく異なるものです。

デンタルインプラントのように大きくなく、直径は1.4~2㎜前後、長さは6~10㎜ぐらいのチタン合金製の微小なネジです。

矯正歯科治療が終わって必要なくなったら抜くものですし、デンタルインプラントのように様々なトラブルが多いものではありませんので、ご安心下さい。

歯科矯正用アンカースクリューを用いた治療(インプラント矯正)のメリット

歯科矯正用アンカースクリューには以下のようなたくさんのメリットがあります。
アンカースクリューを用いることで、治療の幅が格段に広がってきたように思います。
まだまだ発展途上の部分もたくさんありますが、今後の発展が非常に期待できる分野であると、個人的には思っています。

  • 強固な固定源

    小臼歯を抜歯して前歯を後ろに下げる時には、図のように前歯と奥歯で引っ張り合います。この時、前歯も下がりますが、反作用で奥歯も前にずれてきます。奥歯が前にずれてほしくない場合、従来はヘッドギアーなどで奥歯を後ろに押すように力を加えて、固定源を強化していました。矯正用アンカースクリューを用いることで強固な固定源を得ることができ、通常の矯正治療よりも大きく前歯を後ろに動かすことができます。

  • 治療期間の短縮

    上記の固定源の問題から、犬歯~犬歯の6本をまとめて引っ張る場合には奥歯が前にずれてしまうことがありました。その場合、犬歯を動かしてから前歯4本をまとめて動かすような二段階の移動を行うこともあります。矯正用アンカースクリューを用いることで、まとめて移動することができるため、治療期間を短縮できる可能性が高くなります。

  • 非抜歯治療の可能性向上

    これまで、奥歯を後ろに動かすのは、ほとんど不可能に近い移動様式と考えられていました。しかしながら、矯正用アンカースクリューを用いることで奥歯を後ろに動かすことができるようになりました。そのため、従来は小臼歯抜歯が必要な症例でも、非抜歯でならべることができる可能性が高くなります。

  • 患者様の負担軽減

    上記の固定源の問題から、従来は患者様にヘッドギアーなどを使用して頂き、協力してもらっていました。その協力の度合いで治療の成否が左右されていましたが、患者様の協力に頼ることなく、治療目標を達成できるようになりました。

  • 大臼歯、前歯の圧下

    これまで、困難であった圧下(歯を骨の中に沈めるように動かすこと)が可能となってきました。そのため、前歯部の圧下によるガミースマイル(笑った時に歯ぐきがたくさんみえること)の改善や、臼歯部の圧下による開咬の改善などが可能となってきました。

  • 外科矯正の回避

    これまで、外科的矯正治療を適応していた骨格性の上顎前突、下顎前突、開咬などへ適応することで、外科的矯正治療を回避することが可能となってきました。また、外科手術の負担が少なくできる(上下顎移動術→下顎移動術単独などへ)可能性も考えられます。

歯科矯正用アンカースクリューを用いた治療(インプラント矯正)の手順について

  • 矯正用アンカースクリューの埋入は1本5~10分ぐらいで終わります。
  • その後の痛みも少ない場合が多いです。
  • 動かし終わった後は、スクリューを抜きますが、ほとんどの場合麻酔は必要ありません。

以前は粘膜を切開して、ドリルで骨に穴をあけて、スクリューを入れて、縫合すると言った口腔外科的な処置が必要でしたので、口腔外科に依頼していましたが、現在のものは非常に簡便になっています。

  • 1レントゲン等の資料からスクリューの埋入部位、埋入方向の検討を行います。
  • 2消毒、少量の麻酔を行います。 スクリューが歯根に近い場合、埋入時に違和感を生じます。その場合、方向を変えて入れなおしますが、このような感覚がなくならないように、あまりしっかりと麻酔は行いません。表面の粘膜が痛くない程度の麻酔の量で十分です。
  • 3切開等は行わず、アンカースクリューをドライバーで入れていきます。 いわゆる木ネジと同じ要領です。ほとんど出血はしません。しかしながら、抵抗が強くスクリュー破折の危険性がある場合は、ドリルで誘導孔を形成する場合もあります。
  • 4しっかりと植立されたことを確認し、消毒します。 すぐに矯正力をかける場合もありますし、ある程度の治癒期間を設けてから矯正力をかける場合もあります。
  • 5抗生物質、鎮痛剤の処方を行い、清掃等の指導を行います。

歯科矯正用アンカースクリューを用いた治療(インプラント矯正)のリスクについて

歯科矯正用アンカースクリューを用いた治療(インプラント矯正)のリスクは、は、

  • アンカースクリューの動揺、脱落
  • 周囲粘膜の感染、炎症に伴う腫れ、痛み
  • アンカースクリューの破折
  • 歯根への接触、損傷
  • 骨、粘膜の過形成

などが挙げられます。
しかしながら、細心の注意を払いながら行えば問題無い場合がほとんどです。もし上記のような問題が生じた場合でも早急に対処すれば問題ない場合が多いです。ちなみに一番多いのが、動揺・脱落ですが、感覚的には10~15本に1本位の割合で生じているように思われます。しかしながら、前述しましたように10分程度で終わる簡単な処置ですので、脱落した場合には場所をずらして再埋入する場合が多いです。

日本矯正歯科学会は歯科矯正用アンカースクリューのガイドラインを作成していますが、

  • ガイドラインに則って治療を行うこと
  • 日本矯正歯科学会の認定医資格を有すること
  • 教育研修セミナー等を受講して研鑽を行うこと

などを資格要件として挙げています。得られる治療効果が大きいため、当院では積極的に用いています。

よくある質問

  • Q.メリットはなんですか?

    メリットは、たくさんあります。まずは普通の矯正治療よりも大きく歯を動かすことができるため、出歯の場合でもしっかり歯を内側に動かすことができます。また、治療期間が短くなる可能性が高くなります。さらに、従来では抜歯が必要な症例や手術が必要な症例でも、それらを回避した治療が可能となる場合があります。矯正治療の幅が広がるものと考えて頂くとよいと思います。当院ではメリットが大きいため、積極的に用いています。

  • Q.治療期間が短くなりますか?

    個人差はありますが、抜歯をして、前歯全体を後ろに動かすような場合は、短くなると思います。なお、本来は抜歯が必要な症例や手術が必要な症例の場合は、逆に若干治療期間が長くなる場合もあります。

  • Q.歯ぐきにネジがささっていて痛くないですか?

    歯ぐきにささっていること自体の痛みはありません。スクリューを入れた後は鎮痛剤を飲んでもらいますが、ほとんどの人が次の日の朝には痛くなかったと言っています。歯ぐきから出ているスクリューの頭の部分が、慣れるまでは頬や舌に当たって痛い場合があります(矯正のマルチブラケットを付けた時の痛みと同じです)。また、スクリュー周囲の清掃が不十分だと、炎症を起こして腫れたり痛みが出たりすることはありますが、それほど頻度は多くありません。

  • Q.スクリューを入れるのは手術になりますか?

    手術ほど大げさなものではありません。小臼歯の抜歯や根管治療(神経の治療)よりも負担は少ないかもしれません。ほとんどの場合が、わずかに麻酔をして、切開等は行わず、スクリューをドライバーで入れていきます。 いわゆる木ネジと同じ要領です。ほとんど出血はしません。当院で行いますし、実際の処置時間は1本あたり5~10分程度です。

  • Q.スクリューを抜くときは痛いですか?

    スクリューを抜くときは、ほとんど麻酔は不要です。麻酔が無くても大丈夫な程度だと思って下さい。

  • Q.スクリューを抜いた後の穴はどうなりますか?

    スクリューを抜いた後の歯ぐきの穴は次の日には見えなくなっています。その穴から食べ物が入り込むと言うこともありません。また、歯ぐきの骨にも穴は開いていますが、骨は数カ月で元に戻ります。

  • Q.インプラントと聞くと身構えてしまいますが・・?

    名称が良くないのだと思います。薬事法の承認を受ける前まではインプラントアンカーと呼んでいた時代もありましたが、結果的に「歯科矯正用アンカースクリュー」と言う名称になりました。デンタルインプラントは、数十㎏という咬む力を支えるものですが、歯科矯正用アンカースクリューは歯科矯正治療に用いている数百gの力を支えられれば十分ですので、長さは6~10㎜前後、太さは1.4~2.0㎜前後とはるかに小さい構造となっています。また、デンタルインプラントは撤去しないものですが、歯科矯正用アンカースクリューは、必要なくなれば撤去します。