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  • 悪い7番は抜歯して、親知らずを活用する。
    健康な歯を残すための矯正治療
    ~インプラントを回避するための第二の選択肢~
    【7番欠損編】

    ※この記事は少し専門的な内容を含みますが、
    ・7番を抜歯し、インプラントを勧められた方で、インプラントを回避したい方
    ・7番は神経の処置済みの歯で、親知らずが残っている方
    ・健康な4番抜歯に違和感があり、悪い歯を抜いて、健康な歯をできるだけ残したい方
    を主な対象として書いています。


    ◆「インプラントは避けたい」、「健康な歯を残したい」、「親知らずを使えないかな?」と思っているあなたへ


    「奥歯(7番)がダメなので、抜いてインプラントにしましょう。
     親知らず(8番)も邪魔なので抜きますね」

    「親知らず(8番)は横を向いているので抜きましょう(7番は根管治療歯)」

    「矯正のために4番(健康な歯)を抜きます。
     奥歯は神経を抜いた歯ですがそのまま使いますね」

    歯科医院でこのように説明されたあなたは、心のどこかで「もっと別の、自分の歯を活かせる方法があるのではないか」と感じて、このブログに辿り着かれたのでしょう。

    多くの歯科医師が提案する上のような「通法」は、間違いではありません。

    むしろ、一般的であり、誰もが提案する標準的な治療法なのだと思います。

    しかしながら、JOY矯正歯科クリニックでは、その一般的な通法ではない、健康な歯を残す第二の選択肢も提案しています。

    目次

    (各タイトルをクリックするとジャンプします。)


    ◆ 前回の復習:6番(第1大臼歯)と7番(第2大臼歯)抜歯の違い


    前回の記事では「6番を抜歯した場合」の考え方を解説しましたが、今回は抜歯部位が7番に変わることで、治療戦略がどのように変わるのかを整理します。

    前回のブログ(6番を抜歯してインプラントを回避したケースを知りたい方はこちら→https://www.joy-hanarabi.com/blog/4033.html)では、最も大きな奥歯である「第1大臼歯(6番)」を抜歯し、7番・8番を手前に寄せることでインプラントを回避するパターンを解説しました。

    今回のテーマは「第2大臼歯(7番)」です。ただし、決して7番を積極的に抜きたいわけではありません。

    「7番は残せないので抜歯してインプラント」と言われた方

    「7番は根管治療歯だけど、健康な4番を抜歯して矯正治療」と言われた方

    「7番は根管治療歯だけど、横を向いている8番を抜歯しましょう」と言われた方

    へのメッセージです。

    今回は、「状態が悪い7番を抜歯して、8番を活かす矯正治療」についてご説明します。


    【図解】7番抜歯後に8番を利用する2つのパターン


    7番をやむなく抜歯する場合でも、親知らず(8番)の状態によってはインプラント以外の治療選択肢が考えられます。

    パターン③ 7番を抜歯、親知らず(8番)を起こしながら手前に動かして利用

    このパターン③は、状態の悪い7番を抜歯し、まだ正しい位置に生えていない親知らずを矯正的に起こして奥歯として利用する方法です。

    1. 7番があまり良い状態ではない場合に、7番を抜歯
    2. 埋伏している8番が自然と生えてくる
    3. 傾斜して生えてきた8番を手前に動かしながら並べる


    という動かし方です。

    JOY矯正歯科クリニックによる7番抜歯後に親知らず(8番)を起こして手前に動かし利用する矯正治療の模式図

    治療の考え方

    1. 7番を抜歯、横向き・斜めに埋まっている親知らず(8番)が自然と生えるのを待つ。
    2. 斜めに生えてきた8番を矯正的に起こしながら、7番の位置に移動させる。


    ◆インプラントの前に「矯正」というフィルターを通して見る


    

    7番の抜歯が必要と言われても、すぐにインプラントを選択する前に、歯を動かすことで解決できないかを一度立ち止まって考えることが重要です。

    一般歯科では、7番が保存不可能なら「抜歯してインプラント」というのが標準的な治療です。

    その際、埋まっている親知らずは「メンテナンスしにくい、インプラントの邪魔になる」という理由で、一緒に抜かれる運命にあります。

    しかし、ここで「矯正治療」というフィルターを通すと、景色がガラリと変わります。

    ダメになった7番を抜き、捨てられるはずだった親知らずをその位置まで動かして並べることができれば、高額なインプラント(人工物)を入れることなく、自分の歯で噛めるようになります。

    では、実際の症例をご紹介していきましょう。


    ◆【症例7】パターン③ 状態の悪い7番(根管治療歯)を抜いて、親知らずを利用したケース


    根管治療を行っていた状態の悪い7番を抜いて、親知らず(8番)を利用した症例をご紹介します。

    通常であれば、8番を抜いて、普通に並べる症例だと思いますが、本人と相談の上、根管治療歯の7番を抜いて、健全な8番を利用することとしました。

    25歳ですが、7番を抜くと8番が自然に生えてきます。多少傾斜して生えるため、矯正治療で起こしながら手前に動かしました。

    JOY矯正歯科クリニック 症例7 治療前後のレントゲンの比較。左下7番が根管治療歯で状態不良、8番が埋伏。治療後は状態の悪い左下7番を抜歯し、健全な左下8番を排列
    神経の治療をしてある7番を抜歯して、埋まっている8番を利用しています。
    下の6番の位置があまり変化していないことに注目。
    JOY矯正歯科クリニック 症例7 治療前後の左側口腔内写真の比較。左下7番が抜歯され、左下8番が排列されている。
親知らずの移動と咬合再構成
    神経の治療をしてある7番を抜歯して、埋まっている8番を利用しています。
    上下4・5番の位置関係があまり変化していないことに注目。

    JOY矯正歯科クリニック 症例7 治療前後の下顎口腔内写真の比較。左下7番が抜歯され、左下8番が排列されている。下顎左右小臼歯の位置に変化がないことに注目
    JOY矯正歯科クリニック 症例7 治療前後のレントゲン(側面セファログラム)の比較。非抜歯で、上顎前突が改善。
    JOY矯正歯科クリニック 症例7 治療1年3か月の口腔内写真。左下7番が抜歯され、左下8番が自然と萌出している。

    左下7番は根管治療歯で余り状態も良くなかったため、左下7番を抜歯し、8番を利用しました。

    今回は、7番を抜歯して自然と8番が生えてきたため、左下8番を移動させるのに、歯科矯正用アンカースクリューを用いるほどではありませんでした。

    結果

    「根管治療歯の7番を残して矯正、将来的に抜歯→インプラント」と言う流れを断ち切ることができた。

    天然歯のみで奥歯の咬み合わせを再構築

    治療期間は通常より延長(約3年6か月)

    このように、条件がそろえば 親知らずは「抜く歯」ではなく「使える歯」 になります。

    症例7

    1. 主訴:上の歯が出ている、一度、他院で矯正治療を行ったが、出っ歯が治らなかった。
    2. 診断名:上顎前突症、叢生
    3. 初診時年齢:25歳
    4. 治療に用いた主な装置:マルチブラケット装置、歯科矯正用アンカースクリュー
    5. 抜歯部位:上顎左右8番、右下8番、左下7番
    6. 動的治療期間・通院回数:2年3ヵ月・約30回
    7. 治療費概算:約100万円(税込、検査・診断料+矯正治療費+大臼歯加算+スクリュー費)+毎回の処置料3,300~5,500円(税込)
    8. リスクと副作用: 歯根吸収の可能性がある。大臼歯移動のため、通常より治療期間が延長する可能性が高い。


    ◆【症例8】パターン③ 親知らず(8番)により歯根吸収していた7番を抜いて、8番を利用したケース


    次は、親知らず(8番)により、7番の歯根が大きく吸収していたため、状態の悪い7番を抜歯して、8番を矯正的に利用した症例をご紹介します。

    後述しますが、CTを用いて診断しないと7番の歯根吸収の状態に気が付かない場合もあります。

    JOY矯正歯科クリニック 症例8 治療前のレントゲンとCT画像では、左下8番による左下7番の歯根吸収を認める。治療10ヵ月後のレントゲンでは、左下7番が抜歯され、左下8番が自然と萌出してきている。

    7番を抜歯すると、8番は自然と生えてくることが多いです

    ただし、多くの場合は、手前に傾斜しながら生えてきますので、やはり矯正治療で傾斜を改善しながら、手前に動かす必要があります。


    ある程度生えてきてから、部分的なワイヤー矯正とアンカースクリューを用いて8番を手前に動かします。

    この患者様はマウスピース型矯正装置で治療中ですが、8番を並べるのはマウスピース型矯正装置では困難ですので、部分ワイヤーを用いています。

    JOY矯正歯科クリニック 症例8 治療前後の下顎口腔内写真の比較。下顎左右7番が抜歯され、下顎左右8番が自然と萌出してきている。
    治療前と10ヵ月後の比較。下顎左右7番が抜歯され、下顎左右8番が自然と萌出してきている。

    JOY矯正歯科クリニック 症例8 治療前後の左側口腔内写真の比較。左下7番が抜歯され、左下8番が萌出してきている。
    治療前と10ヵ月後の比較。上顎左右4番も抜歯し、マウスピース型矯正装置にて治療中。
    上顎前突が改善してきている。

    症例8

    1. 主訴:上の歯が出ている、口が閉じにくい、すき間、歯並び
    2. 診断名:上顎前突症、開咬、下顎前歯先天欠如
    3. 初診時年齢:24歳
    4. 治療に用いた主な装置:マウスピース型カスタムメイド歯科矯正装置、部分マルチブラケット装置、歯科矯正用アンカースクリュー
    5. 抜歯部位:上顎左右4番、下顎左右7番
    6. 動的治療期間・通院回数:10ヵ月(治療中)・約7回
    7. 治療費概算:約120万円(税込、検査・診断料+矯正治療費+大臼歯加算+スクリュー費)+毎回の処置料3,300~5,500円(税込)
    8. リスクと副作用: 歯根吸収の可能性がある。大臼歯移動のため、通常より治療期間が延長する可能性が高い。


    ◆安易な親知らず抜歯は要注意!〈br〉CT診断で見える親知らずによる7番歯根吸収のリスク


    親知らずは必ずしも「抜くべき歯」ではなく、CT診断によって7番への影響を正確に評価することが重要になります。

    まれに、横向きに埋まっている親知らずが手前の7番を押し続け、7番の根っこを溶かしてしまう「歯根吸収」という現象が起こっていることがあります。

    これは、なぜか自覚症状がない場合もあるため、注意が必要です。

    通常のレントゲンでは重なって見えない部分も多いため、CTによる3次元診断が不可欠です。

    もし7番の根が著しく吸収されていた場合、親知らずだけを抜いても、残された7番はやがて痛み出し、抜歯を余儀なくされる可能性が高くなります。

    そうなると結果的に7番・8番の2本を失うことになります。

    安易に8番を抜歯しないことも重要だと思います。

    JOY矯正歯科クリニックでは、ダメージのある7番を抜き、健全な親知らずをその位置へ誘導する矯正治療をご提案しています。

    JOY矯正歯科クリニックによるCT診断で7番歯根吸収を評価し親知らずを安易に抜かない重要性の図解


    パターン④ 7番を抜歯、すでに生えている親知らず(8番)手前に動かして利用



    パターン③では、7番を抜歯することで、8番が自然と生えてくるため、8番を利用する治療の中では、移動量は少なくて済みます。

    それに対して、このパターン④は、すでに生えている8番を、7番抜歯後のスペースに移動させて、奥歯として利用するパターンです。パターン③よりも、8番の移動量が大きいため、難易度が高くなり、時間もかかります。

    JOY矯正歯科クリニックのパターン④ 7番を抜歯して既に生えている親知らず(8番)を前方へ移動させる矯正治療の模式図


    【症例9】パターン④ 7番のブリッジが外れ、インプラントを勧められたが、8番を利用してインプラントを回避したケース


    症例の概要

    数年前に右下7番を抜歯して、右下6番と8番でブリッジを入れていましたが、外れてしまい、デンタルインプラントを勧められた方です。8番を利用してインプラントを回避した症例です。

    茨城県からお越しの方でしたので、できるだけ通院回数を減らす工夫をしています。

    途中までリンガルアーチと部分ワイヤー矯正、アンカースクリューを用いて、右下8番を近心移動。おおむねスペースが閉じてから、マウスピース型矯正装置で、咬み合わせと歯並びを整えています。

    JOY矯正歯科クリニック 症例9 右下7番ブリッジ脱離でインプラント勧められたが8番を利用して矯正的にスペース閉鎖した治療前後のレントゲン写真の比較。
    右下7番が抜歯されブリッジのスペースあり。8番を手前に移動して矯正的にスペースを閉鎖した。
    JOY矯正歯科クリニック 症例9 右下7番ブリッジ脱離でインプラント勧められたが8番を利用して矯正的にスペース閉鎖した治療前後の右側口腔内写真の比較。
    JOY矯正歯科クリニック 症例9 右下7番ブリッジ脱離でインプラント勧められたが8番を利用して矯正的にスペース閉鎖した治療前後の下顎口腔内写真の比較。
    JOY矯正歯科クリニック 症例9 右下7番ブリッジ脱離でインプラント勧められたが8番を利用して矯正的にスペース閉鎖中の口腔内写真。アンカースクリューを固定源に右下8番を近心移動中。

    症例9
    ①主訴:右下のインプラントを避けたい。4年前に右下にブリッジを入れたが、最近外れて、デンタルインプラントを勧められた。
    ②診断名:空隙歯列、下顎前突症、右下7番欠損
    ③初診時年齢:28歳、茨城県より来院
    ④治療に用いた主な装置:マルチブラケット装置、
    歯科矯正用アンカースクリュー、リンガルアーチ、
    マウスピース型カスタムメイド矯正装置
    ⑤抜歯部位:右上8番
    ⑥動的治療期間・通院回数:3年6ヵ月・約30回
    ⑦治療費概算:約105万円(税込、検査・診断料+矯正治療費+大臼歯加算+スクリュー費)+毎回の処置料3,300~5,500円(税込)
    ⑧リスクと副作用: 歯根吸収の可能性がある。大臼歯移動のため、通常より治療期間が延長する可能性が高い。


    【症例10】パターン④ 上顎7番が歯根破折のため抜歯、8番を利用してインプラントを回避したケース


    症例の概要

    左上7番が歯根破折しているため、抜歯が必要になりました。左上7番を抜いた場所に左上8番を動かして7番の代わりに使用した症例です。

    また、著しい上顎前突だったため、通常なら4番を抜歯したい症例ですが、すでに5番が抜歯されていました。結果的に左上は2本分のスペースを閉じることになった難症例です。

    JOY矯正歯科クリニック 症例10 左上7番歯根破折で抜歯し、左上8番を利用してインプラント回避した症例の治療前後のレントゲン写真の比較。
    左上7番が歯根破折のため抜歯。左上8番を手前に動かして7番の代わりに使用した症例です。
    すでに5番が抜歯されており、結果的に2本分のスペースを閉じることになった難症例です。
    JOY矯正歯科クリニック 症例10 左上7番歯根破折で抜歯し、左上8番を利用してインプラント回避した症例の左側口腔内写真の治療前後の比較
    JOY矯正歯科クリニック 症例10 左上7番歯根破折で抜歯し、左上8番を利用してインプラント回避した症例の右側口腔内写真の治療前後の比較
    JOY矯正歯科クリニック 症例10 左上7番歯根破折で抜歯し、左上8番を利用してインプラント回避した症例の上顎口腔内写真の治療前後の比較
    左上7番が歯根破折のため抜歯。左上8番を手前に動かして7番の代わりに使用した症例です。
    すでに5番が抜歯されており、結果的に2本分のスペースを閉じることになった難症例です。
    JOY矯正歯科クリニック 症例10 左上7番歯根破折で抜歯し、左上8番を利用してインプラント回避した症例のレントゲン写真(側面セファログラム)の治療前後の比較。著しい上顎前突が改善。
    JOY矯正歯科クリニック 症例10 左上7番歯根破折で抜歯し、左上8番を利用してインプラント回避した症例の治療中の口腔内写真。アンカースクリューを使用してスペースを閉じている。

    症例10
    ①主訴:出っ歯、左上7番の根が折れている。左上のインプラントを避けたい。
    ②診断名:上顎前突症、叢生
    ③初診時年齢:39歳
    ④治療に用いた主な装置:マルチブラケット装置、
    歯科矯正用アンカースクリュー
    ⑤抜歯部位:右上4番、左上7番、右下8番、左下5番
    ⑥動的治療期間・通院回数:3年3ヵ月・約36回
    ⑦治療費概算:約105万円(税込、検査・診断料+矯正治療費+大臼歯加算+スクリュー費)+毎回の処置料3,300~5,500円(税込)
    ⑧リスクと副作用: 歯根吸収の可能性がある。大臼歯移動のため、通常より治療期間が延長する可能性が高い。


    【症例11】パターン③+④ 通常は4番を抜歯する代わりに、根管治療歯の6番を抜歯、8番を利用してできるだけ健全歯を残して治療したケース


    一般的には健全な小臼歯を抜歯する場面でも、問題のある歯を優先して抜歯し、親知らずを活用することで健全な歯のみで並べた症例です。大臼歯を抜歯しても口元の改善も得られています。

    症例の概要

    右上:4番抜歯し、8番まで利用

    左上:4番の代わりに6番(根管治療歯)を抜歯し、7・8番を利用

    右下:4番を抜歯し、横を向いていた8番を起こして利用

    左下:4番の代わりに7番(根管治療歯)を抜歯し、8番まで利用

    結果的に、4本は抜歯していますが、8番まで利用して、健全歯のみの28本で咬み合わせを作りつつ、口元の突出感を改善した症例です。

    4番4本抜歯の場合、治療後に8番も4本抜歯したということも良く聞きます。結果的に4本抜歯のみで済んだため、将来的なデンタルインプラントの可能性はかなり回避できたのではないかと思います。

    JOY矯正歯科クリニック 症例11 4番の代わりに6番や7番の根管治療歯を抜歯し、親知らず(8番)を活用して健全な歯のみで咬合再構築した治療前後のレントゲン写真の比較
    JOY矯正歯科クリニック 症例11 4番の代わりに6番や7番の根管治療歯を抜歯し、親知らず(8番)を活用して健全な歯のみで咬合再構築した治療前後の左側口腔内写真の比較
    JOY矯正歯科クリニック 症例11 4番の代わりに6番や7番の根管治療歯を抜歯し、親知らず(8番)を活用して健全な歯のみで咬合再構築した治療前後の正面口腔内写真の比較
    JOY矯正歯科クリニック 症例11 4番の代わりに6番や7番の根管治療歯を抜歯し、親知らず(8番)を活用して健全な歯のみで咬合再構築した治療前後の上顎口腔内写真の比較
    JOY矯正歯科クリニック 症例11 4番の代わりに6番や7番の根管治療歯を抜歯し、親知らず(8番)を活用して健全な歯のみで咬合再構築した治療前後の下顎口腔内写真の比較
    JOY矯正歯科クリニック 症例11 4番の代わりに6番や7番の根管治療歯を抜歯し、親知らず(8番)を活用して健全な歯のみで咬合再構築した治療中の口腔内写真。アンカースクリューを使用して歯を遠心移動している。
    JOY矯正歯科クリニック 症例11 4番の代わりに6番や7番の根管治療歯を抜歯し、親知らず(8番)を活用して健全な歯のみで咬合再構築した治療前後の顔貌、口元の変化。きれいなEラインが得られ、口呼吸が改善。
    左:治療前、口元の突出感が顕著で口が閉じにくい
    右:治療後、きれいな口元になり口呼吸が改善

    症例11
    ①主訴:前歯で咬めない。口が閉じにくい。
    ②診断名:開咬、上顎前突症、叢生
    ③初診時年齢:19歳
    ④治療に用いた主な装置:マルチブラケット装置、歯科矯正用アンカースクリュー
    ⑤抜歯部位:右上4番、左上6番、右下4番、左下7番
    ⑥動的治療期間・通院回数:3年5ヵ月・約36回
    ⑦治療費概算:約105万円(税込、検査・診断料+矯正治療費+大臼歯加算+スクリュー費)+毎回の処置料3,300~5,500円(税込)
    ⑧リスクと副作用: 歯根吸収の可能性がある。大臼歯移動のため、通常より治療期間が延長する可能性が高い。


    7番抜歯、親知らず利用の矯正治療のメリットと注意点


    7番抜歯と親知らず利用には明確なメリットがある一方で、適応やリスクを正しく理解することが不可欠です。

    前回のブログ(6番を抜歯してインプラントを回避したケースを知りたい方はこちら→https://www.joy-hanarabi.com/blog/4033.html)でも載せていますが、一応、復習のためにかいておきます。

    メリット

    ・自分の歯で噛める

    人工物であるインプラントには寿命やインプラント周囲炎などのリスクがありますが、自分の歯であれば、適切なケアを行えば、一生使い続けることが期待できます。また、ブリッジの場合は、本来3本で支えるべき咬む力を2本で支えることになるため、負担過多になりやすいこと、作製する際の歯の削除量が大きいですが、作り直すたびにさらに削りなおすことになることなどから、歯への負担は大きくなります。

    ・費用を抑えられる可能性

    インプラントの上部構造は、何度か作り直す可能性もありますし、ブリッジも何十年もそのまま使えるとは限りません。その度に費用が発生しますし、インプラントを2本、3本と入れることになれば、結果的に矯正治療の方が安く済む場合が多いと思います。

    ・人工物を体の中に入れなくても済む

    デンタルインプラントは人工物を体の中に埋め込む手術です。歯ぐきの粘膜を金属が貫通しているため、その部分で感染するリスクはあります。そのため、メンテナンスが必須となっています。患者さんの中には人工物を体の中に入れることに抵抗がある方もいらっしゃいます。最近では、介護状態になった高齢の方では、十分なメンテナンスができないため、問題が生じ始めているようです。

    ・外科処置をしなくて済む

    デンタルインプラントを埋入する手術は外科処置となります。また、親知らずの抜歯も外科処置です。これらの処置が必要なくなります。

    注意点

    ・この移動様式は非常に難易度が高くなります。行っている矯正歯科はそれほど多くないかもしれません。

    ・大臼歯は大きいため、動きにくいことに加え、移動量が大きくなるため、治療期間が長引く可能性が高くなります。

    ・抜歯部位の骨が痩せていたり、下がっていると、動かすのが困難になります。また、仮に動かせたとしても、動かした歯の周りの骨が下がってしまい、安定しないことがあります。

    ・残っている歯の状態が悪い場合は、適応でない場合もあります。

    ・長年埋まっている親知らずは、骨性癒着して動かせないことがあります。

    重要なのは、精密検査と適応があるかどうかという診断です。

    ただし、難しい処置のため、あまり積極的に行っている矯正歯科は多くないかもしれません。


    ◆よくある質問


    Q:親知らずは誰でもふつうに使えますか?

    A:親知らず(8番)の位置・向き・歯の状態によって異なり、CT検査での評価が必要ですが、十分に使える場合も多いと思います。デンタルインプラントを入れたくない方にはおススメだと思います。

    Q:このような治療は、どの歯医者でもやってくれますか?

    A:矯正歯科を専門にしている歯科医師でも難しい部類の動かし方ですので、一般歯科では難しいかもしれません。また、大学病院で断られたと言って当院にお越しになる患者様もいますので、矯正歯科専門医院でも実践している医院は少ないのかもしれません。一度、近隣の矯正歯科で相談されると良いと思います。


    ◆まとめ
    7番が根管治療歯の場合、親知らずを有効活用できることも
    8番を抜歯する前にCTで7番の歯根吸収が無いか要確認すべし!


    7番が保存困難な場合でも、親知らずの状態次第ではインプラント以外の選択肢があり、抜歯前のCT診断が重要な判断材料となります。

    一般歯科で、

    「7番を抜歯しましょう」

    「7番の神経を取りましょう」

    「7番にインプラントを入れましょう」

    と言われても、8番がある場合は、まだ希望があります。

    また、

    8番は安易に抜歯しないで、7番の歯根吸収が疑われる場合は、CTでしっかり確認してもらった方が良いと思います。

    7番や親知らずの扱いで迷っている方は、安易にインプラントや親知らずの抜歯を決める前に、一度、矯正的な選択肢があるかを確認することをおすすめします。


    監修歯科医師


    JOY矯正歯科クリニック院長 福山英治 歯科医師

    福山 英治(ふくやま えいじ)
    JOY矯正歯科クリニック 院長

    東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)歯学部附属病院 矯正歯科外来に16年間在籍。
    副診療科長・外来医長として、大学病院における矯正歯科診療の責任者を務めるとともに、多数の後進の指導と外来の運営統括に携わる。
    現在はJOY矯正歯科クリニック院長として、大学病院水準の矯正治療を地域医療の現場で実践している。

    東京医科歯科大学歯学部 臨床教授(2011~2015)
    東京医科歯科大学歯学部 非常勤講師(2011~2017)
    日本矯正歯科学会 指導医・認定医
    日本顎関節学会 専門医
    歯学博士

    教育・大学での勤務歴

    東京医科歯科大学歯学部附属病院
        矯正歯科外来医員(1999)
    横浜市立大学附属市民総合医療センター
        歯科・口腔外科・矯正歯科 助手(2000)
         単身にて矯正歯科部門新規設立
    東京医科歯科大学咬合機能矯正学分野
        助手(2004)同講師(2006)
    東京医科歯科大学歯学部附属病院矯正歯科外来
        副診療科長・外来医長(2006~2010)
        医局員70数名を指導・後進育成および外来運営を統括

    臨床歴


    東京医科歯科大学歯学部卒業(1995)
    医療法人小川矯正歯科を承継、理事長就任(2011)
    医療法人社団邦英会JOY矯正クリニックに医院名改称
        院長・理事長(2012)

  • 奥歯を抜歯と言われたら?
    インプラントを回避し「親知らず」を移動させる矯正治療の可能性【6番欠損編】

    ※この記事は少し専門的な内容を含みますが、
    ・6番を抜歯し、インプラントを勧められた方で、インプラントを回避したい方
    ・6番は神経の処置済みの歯で、親知らずが残っている方
    を主な対象として書いています。


    「奥歯を抜いたらインプラントしかない」と言われた方へ


    6番(第一大臼歯)は、咬み合わせにとても重要な歯です。
    そのため、大きな虫歯、歯周病、神経の処置後の根の病巣、歯や歯根の破折などで保存が難しくなり、抜歯が必要になった場合、

    「このスペースは大きいので、デンタルインプラントになりますね。」

    と説明を受けるケースが少なくありません。

    確かに、6番を抜歯すると 10mm以上の大きなスペース が生じるため、
    一般的には

    ・デンタルインプラント(人工歯根)

    ・ブリッジ

    ・義歯(入れ歯)

    といった補綴治療が選択されることが多いのが現実です。

    しかし、残っている歯の状態によっては、矯正治療によってそのスペースを閉じ、インプラントを回避できるケースがあります。

    JOY矯正歯科クリニックでは、
    このような「大臼歯抜歯後にインプラントを回避する矯正治療」を、比較的多く行っています。

    本記事では、当院で行っている大臼歯を移動させる矯正治療と実際の症例について詳しく解説します。

    ※ちなみに、7番を抜歯してインプラントを回避したケースを知りたい方はこちら→https://www.joy-hanarabi.com/blog/4144.html

    目次

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    ◆6番を抜歯すると、なぜ問題になるのか


    6番は、永久歯の中で最も大きく、咬む力を強く受ける歯です。
    この歯を抜歯すると、次のような問題が起こりやすくなります。

    • 約10~12mmの大きな欠損スペースが生じる。
    • 前後の歯が倒れ込んでくる。
    • 上の(下の)歯が伸びてきてしまう。
    • 咬み合わせ全体のバランスが崩れる

    このため「放置はできない」、「補う治療(補綴治療)が必要」という判断になり、
    インプラントが第一選択として提示されやすくなります。


    「抜歯後はインプラント」ではなく「矯正治療で閉じる」という発想


    インプラント治療は、失った歯を人工物で補う非常に優れた治療法です。
    一方で、

    • 外科処置が必要。
    • 人工物を体の中に埋め込むため、長期的なメンテナンスが必須。
    • 年齢、埋入する部位の骨の状態、全身状態によっては制限がある。

    といった側面もあります。

    そこで、
    「抜歯後はインプラント」ではなく、「矯正治療で自分の歯を動かしてスペースを閉じる」
    という選択肢をご提案できることがあります。

    ただしこれは、どの症例でも可能な治療ではありません。
    ポイントになるのが、7番(第二大臼歯)と親知らず(8番)の状態です。


    【図解】下顎6番抜歯後に7番・8番を利用する2つのパターン


    下顎6番を抜歯した後の歯の移動様式は、
    残っている歯の状態によって、いくつかの「パターン」に分かれます。詳細については、まとめ編で詳しく解説したいと思いますが、ここでは、特に多い2つのパターンをご紹介します。


    ◆パターン①7番を手前に移動、親知らず(8番)を起こして利用


    下顎6番を抜歯後、7番と親知らず(8番)を利用してインプラントを回避する矯正治療のパターン図①

    このパターン①の考え方は、

    1. 抜歯した6番のスペースに向かって、7番を手前に移動。

    2. 横向き・斜めに埋まっている親知らず(8番)を矯正的に起こしながら、7番の位置に移動させる。

    3. 抜歯スペースを閉じて、デンタルインプラントやブリッジを回避する。


    【症例1】パターン① 7番を移動させ、横を向いた親知らずを利用したケース


    治療開始前のレントゲン写真。左下6番は保存困難で、親知らずは横向きに埋伏している。
    治療開始前のレントゲン写真
    下顎6番抜歯を行い、矯正治療終了後のレントゲン写真。7番が12mm近く近心移動され、6番のスペースは無くなり、親知らずは上向きに並んでいる
    治療後のレントゲン写真、左下6番のスペースは無くなり、左下8番は上向きにならんでいる。
    下顎6番抜歯前の口腔内写真。左下6番は保存困難で、親知らずは横向きに埋伏している
    治療前:凸凹が顕著
    下顎6番抜歯後、7番と親知らずを利用してスペースを閉鎖し、インプラントを回避した治療後の口腔内写真
    治療後
    下顎6番抜歯前の口腔内写真。左下6番は保存困難で、親知らずは横向きに埋伏している
    治療前:上下4番と状態の悪い左下6番を抜歯
    下顎6番抜歯後、7番と親知らずを利用してスペースを閉鎖し、インプラントを回避した治療後の口腔内写真
    治療後:上の6番と下の7番の位置関係を治療前と比較してください。
    下顎6番抜歯前の口腔内写真。左下6番は保存困難で、親知らずは横向きに埋伏している
    治療前:凸凹が顕著なため上顎左右4番を抜歯
    下顎6番抜歯後、7番と親知らずを利用してスペースを閉鎖し、インプラントを回避した治療後の口腔内写真
    治療後:上顎左右8番は今後抜歯予定。
    下顎6番抜歯前の口腔内写真。左下6番は保存困難で、親知らずは横向きに埋伏している
    治療前:左右4番に加えて、状態の悪い左下6番を抜歯。
    下顎6番抜歯後、7番と親知らずを利用してスペースを閉鎖し、インプラントを回避した治療後の口腔内写真
    治療後:左下7番が手前に移動され、左下8番がしっかり上を向いて並んでいる。
    横向きに埋伏していた左下親知らず(8番)を矯正的に起こすために、6番を抜歯する直前の口腔内写真
    治療開始8.5か月:左下6番を抜歯する直前
    横向きに埋伏していた左下親知らず(8番)を矯正的に起こして歯列に誘導している途中の口腔内写真
    治療開始1年3か月:左下8番を起こしている途中

    もともとは上下左右4番を抜歯してワイヤー矯正で歯並びを整えていましたが、
    治療途中で 「状態の悪い左下6番を抜歯し、親知らずを利用したい」 というご希望がありました。

    左下6番は約12.1mmと非常に大きく、
    横向きに埋まっていた左下8番(親知らず)は一部だけ歯が見えている状態でした。

    そこで、歯科矯正用アンカースクリューを固定源として7番を手前に移動し、
    その後、横向きだった親知らずを起こして歯列に組み込みました。

    結果

    インプラントを使用せずにスペースを閉鎖

    天然歯のみで奥歯の咬み合わせを再構築

    治療期間は通常より延長(約3年6か月)

    このように、条件がそろえば 親知らずは「抜く歯」ではなく「使える歯」 になります。

    1. 主訴:歯のでこぼこ
    2. 初診時年齢:21歳、男性
    3. 診断名:叢生、上下顎前突
    4. 抜歯部位:上下左右4番、左下6番
    5. 治療に用いた主な装置:マルチブラケット装置、歯科矯正用アンカースクリュー
    6. 動的治療期間・通院回数:3年6ヵ月・約30回
    7. 治療費概算:約105万円(税込、検査・診断料+矯正治療費+大臼歯加算+スクリュー費用)+毎回の処置料3,300~5,500円(税込)
    8. リスクと副作用: 歯根吸収の可能性がある。大臼歯移動のため、通常より治療期間が延長する可能性が高い。


    ◆パターン②7番・8番の2本を手前に移動するパターン


    下顎6番を抜歯後、7番と親知らず(8番)を利用してインプラントを回避する矯正治療のパターン図①

    次にご紹介するのは、より応用的なパターンです。

    このパターン②では、

    • 親知らずを「起こして使う」よりも
    • 7番と8番を2本とも大きく手前に移動 させます。

    特徴

    • 移動量が非常に大きい。
    • 治療期間が長くなりやすい。
    • 7番や8番の移動中に手前に倒れやすいため、歯のコントロールが困難。
    • 状態により6番部の歯槽骨が痩せないように2段階に分けて6番を分割抜歯。


    ◆【症例2】パターン② 7番・8番を2本とも大きく移動したケース


    右下6番は神経の処置後で根尖病変があり、再治療が必要でしたが、本人がこの歯を抜歯し、8番を利用したいと来院されました。
    そこで右下6番を抜歯し、健全な7番・8番をアンカースクリューを固定源にして
    大きく手前へ移動させました。

    注目すべき点は、
    「前歯や小臼歯の位置がほとんど変わっていないにも関わらず、奥歯だけが大きく動いている」ことです。

    この症例では、左下7番・8番の移動量が非常に大きいため、歯ぐきの骨が痩せるリスクを考慮し、

    • 左下6番を一度に抜歯しない。
    • 前方半分を残した「分割抜歯」を行って、右下7番を手前に移動させ、スペースが少なくなってから、手前半分の抜歯を行う。

    という慎重な治療計画を立てました。

    治療開始前のレントゲン写真。右下6番は根尖病巣があり、再治療が必要な状態。親知らずは上向きに生えている。
    右下6番が神経の処置済みの歯で根尖病巣を認める。
    治療後のレントゲン写真。右下6番は抜歯され、右下7番・8番が傾斜することなく近心移動されている。
    右下7番、8番が大きく手前に移動している。手前に傾斜していないことに注目。
    治療前の口腔内写真。右下6番は根治歯、根尖病巣があり再治療が必要なため抜歯し、右下7番・8番を近心移動させる。
    右下6番を抜歯し、右下7・8番を手前に移動させる治療方針。
    治療後の口腔内写真。右下6番は抜歯され、右下7番・8番が大きく近心移動されている。
    上の5・6番の位置と比較して、下の7番・8番が大きく手前に移動していることに注目。
    治療前の口腔内写真。右下6番は根治歯、根尖病巣があり再治療が必要なため抜歯し、右下7番・8番を近心移動させる。
    治療後の口腔内写真。右下6番は抜歯され、右下7番・8番が大きく近心移動されている。
    左側6番の位置と比較して、右の7番・8番が大きく手前に移動していることに注目。
    治療前の口腔内写真。前歯部叢生を認め、一部反対咬合を認める。
    治療後の口腔内写真。
非抜歯できれいに排列されている。
    治療前の口腔内写真。前歯部叢生を認める。
    治療後の口腔内写真。
非抜歯できれいに排列されている。
    1. 主訴:歯のでこぼこ、歯を抜かずに、右下の奥歯は親知らずを利用したい。
    2. 診断名:下顎前突症、反対咬合、叢生
    3. 初診時年齢:27歳、男性、千葉より通院
    4. 治療に用いた主な装置:マルチブラケット装置、歯科矯正用アンカースクリュー
    5. 抜歯部位:上顎左右8番、右下6番
    6. 動的治療期間・通院回数:3年6ヵ月・約36回
    7. 治療費概算:約105万円(税込、検査・診断料+矯正治療費+大臼歯加算+スクリュー費)+毎回の処置料3,300~5,500円(税込)
    8. リスクと副作用: 歯根吸収の可能性がある。大臼歯移動のため、通常より治療期間が延長する可能性が高い。大臼歯抜歯に伴い、抜歯部の歯槽骨吸収の可能性がある。


    【症例3】パターン② 下顎7番と8番を10mm以上移動したケース


    この症例では、左下7番・8番を 10mm以上 手前に移動する必要がありました。
    移動量が非常に大きいため、歯ぐきの骨が痩せるリスクを考慮し、症例2と同様に、左下6番を一度に抜歯しないで、後方半分を残した「分割抜歯」を行って、左下7番を手前に移動させ、スペースが少なくなってから、手前半分の抜歯を行う形としています。

    治療前後の口腔内写真。左上下の4・5番の位置関係が変化していないにも関わらず、左下7・8番が10mm以上近心移動している。
    治療開始2年2か月時の口腔内写真。左下6番の近心根を残して、遠心根のみ抜歯して、左下7・8番を近心移動している。
    治療開始2年2か月時の口腔内写真。
    1. 主訴:デンタルインプラントを避けたい。左下6番を抜歯して、親知らずを利用したい。
    2. 診断名:叢生、下顎前歯先天欠如
    3. 初診時年齢:25歳、男性
    4. 治療に用いた主な装置:マルチブラケット装置、歯科矯正用アンカースクリュー
    5. 抜歯部位:右上5番、左下6番、治療後に上顎左右8番抜歯予定
    6. 動的治療期間・通院回数:4年6ヵ月・約40回(途中で通院できない期間があったため、通常より長くかかりました)
    7. 治療費概算:約105万円(税込、検査・診断料+矯正治療費+大臼歯加算+スクリュー費)+毎回の処置料3,300~5,500円(税込)
    8. リスクと副作用: 歯根吸収の可能性がある。大臼歯移動のため、通常より治療期間が延長する可能性が高い。


    親知らずは抜くしかない?条件次第で矯正に使えるケースがあります


    一般的に親知らずは、

    ・横向き、または斜めに生えている。

    ・上手く磨けていないため、虫歯になっている。

    ・咬み合っていない

    といった理由で抜歯対象になることが多い歯です。

    しかし矯正歯科治療の視点で見ると、

    ・歯の大きさ

    ・歯や根の形

    ・骨の状態

    が良ければ、非常に価値のある歯になることもあります。

    5番、6番、7番の神経の処置をしている方は、親知らずが横を向いて埋まっていても、安易に抜歯しないで、一度ご相談に来ていただければと思います。親知らずを有効活用できることがあります。


    大臼歯抜歯、親知らず利用の矯正治療のメリットと注意点


    メリット

    ・自分の歯で噛める

    人工物であるインプラントには寿命やインプラント周囲炎などのリスクがありますが、自分の歯であれば、適切なケアを行えば、一生使い続けることが期待できます。また、ブリッジの場合は、本来3本で支えるべき咬む力を2本で支えることになるため、負担過多になりやすいこと、作製する際の歯の削除量が大きいですが、作り直すたびにさらに削りなおすことになることなどから、歯への負担は大きくなります。

    ・費用を抑えられる可能性

    インプラントの上部構造は、何度か作り直す可能性もありますし、ブリッジも何十年もそのまま使えるとは限りません。その度に費用が発生しますので、結果的に矯正治療の方が安く済む場合もあると思います。

    ・人工物を体の中に入れなくても済む

    デンタルインプラントは人工物を体の中に埋め込む手術です。歯ぐきの粘膜を金属が貫通しているため、その部分で感染するリスクはあります。そのため、メンテナンスが必須となっています。患者さんの中には人工物を体の中に入れることに抵抗がある方もいらっしゃいます。最近では、介護状態になった高齢の方では、十分なメンテナンスができないため、問題が生じ始めているようです。

    ・外科処置をしなくて済む

    デンタルインプラントを埋入する手術は外科処置となります。また、親知らずの抜歯も外科処置です。これらの処置が必要なくなります。

    注意点

    ・この移動様式は非常に難易度が高くなります。行っている矯正歯科はそれほど多くないかもしれません。

    ・大臼歯は大きいため、動きにくいことに加え、移動量が大きくなるため、治療期間が長引く可能性が高くなります。

    ・抜歯部位の骨が痩せていたり、下がっていると、動かすのが困難になります。また、仮に動かせたとしても、動かした歯の周りの骨が下がってしまい、安定しないことがあります。

    ・残っている歯の状態が悪い場合は、適応でない場合もあります。

    ・長年埋まっている親知らずは、骨性癒着して動かせないことがあります。

    重要なのは、精密検査と適応があるかどうかという診断です。

    ◆よくある質問


    Q:6番を抜歯したらふつうはどういう処置をしますか?

    A:6番を抜歯したら、そのままだと、抜歯したスペースに向かって隣の歯が傾斜する、上の歯が延びだすなど、咬み合わせが崩れます。そのため、デンタルインプラント、ブリッジ、入れ歯といった補綴処置(ほてつしょち)を行うのが一般的な選択肢です。ブリッジは歯を削る量が大きく、入れ歯は患者様がご希望されないことも多いため、デンタルインプラントを選ぶことが多いかもしれません。

    Q:このような治療は、どの歯医者でもやってくれますか?

    A:矯正歯科を専門にしている歯科医師でも難しい部類の動かし方ですので、一般歯科では難しいかもしれません。また、大学病院で断られたと言って当院にお越しになる患者様もいますので、矯正歯科専門医院でも実践している医院は少ないのかもしれません。一度、近隣の矯正歯科で相談されると良いと思います。


    ◆まとめ:インプラント以外の選択肢を「知った上で」決める


    大臼歯を抜歯した場合、インプラントは確かに優れた治療法です。

    一方で、

    残っている歯の条件が良ければ、矯正歯科治療によって、天然歯のみで咬み合わせを再構築できる

    という選択肢も存在します。

    大切なのは、
    「インプラントしかない」と思い込む前に、別の可能性を知ること」

    その上で、ご自身に合った治療を選んでいただければと思います。

    ただし、難しい処置のため、あまり積極的に行っている矯正歯科は多くないかもしれません。

    6番を抜歯するとか親知らずの扱いに迷っている方は、安易にインプラントや親知らずの抜歯を決める前に、一度、矯正的な選択肢があるかを確認することをおすすめします

    ※ちなみに7番を抜歯してインプラントを回避したケースを知りたい方はこちら→https://www.joy-hanarabi.com/blog/4033.html)


    監修歯科医師


    JOY矯正歯科クリニック院長 福山英治 歯科医師

    福山 英治(ふくやま えいじ)
    JOY矯正歯科クリニック 院長

    東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)歯学部附属病院 矯正歯科外来に16年間在籍。
    副診療科長・外来医長として、大学病院における矯正歯科診療の責任者を務めるとともに、多数の後進の指導と外来の運営統括に携わる。
    現在はJOY矯正歯科クリニック院長として、大学病院水準の矯正治療を地域医療の現場で実践している。

    東京医科歯科大学歯学部 臨床教授(2011~2015)
    東京医科歯科大学歯学部 非常勤講師(2011~2017)
    日本矯正歯科学会 指導医・認定医
    日本顎関節学会 専門医
    歯学博士

    教育・大学での勤務歴

    東京医科歯科大学歯学部附属病院
        矯正歯科外来医員(1999)
    横浜市立大学附属市民総合医療センター
        歯科・口腔外科・矯正歯科 助手(2000)
         単身にて矯正歯科部門新規設立
    東京医科歯科大学咬合機能矯正学分野
        助手(2004)同講師(2006)
    東京医科歯科大学歯学部附属病院矯正歯科外来
        副診療科長・外来医長(2006~2010)
        医局員70数名を指導・後進育成および外来運営を統括

    臨床歴


    東京医科歯科大学歯学部卒業(1995)
    医療法人小川矯正歯科を承継、理事長就任(2011)
    医療法人社団邦英会JOY矯正クリニックに医院名改称
        院長・理事長(2012)

  • オームコフォーラムに参加しました

    2024年11月7日に横浜のウェスティンホテルで開催されたオームコフォーラムに参加しました。今回は、コミュニケーションスキルやフロスト先生の医院運営、実際の症例など、矯正治療の最新知見を深めることができました。

    特に患者さんとの信頼関係を築く重要性を再認識し、私たちが活かせることがたくさんありました。今後の治療に役立て、より良い患者体験を提供できるよう努力します。

  • 日本矯正歯科学会に参加しました

    10月31日にパシフィコ横浜で開催された日本矯正歯科学会学術大会に参加してきました。 海外から来日された先生方のお話やMFTに関する最新情報など、貴重な学びがたくさんありました。 日々の診療に役立てるよう、これからも頑張ります。

  • 救命救急講習を実施しました《いざという時に備えて》

    2024年11月20日、当院では全スタッフを対象に救命救急講習を実施しました。この日は横浜市消防局綱島消防出張所の方をお招きし、心肺蘇生(CPR)やAEDの使用方法について、実践を交えながら詳しく学びました。

    AEDの講習では、実際の機器を操作しながら、緊急時に落ち着いて対応するための手順を丁寧に確認しました。スタッフ全員が真剣に取り組み、緊急時に必要な知識と技術をしっかり身に付けることができました。

    医療機関として、日々の診療はもちろん、万が一の事態に備えることも私たちの大切な使命です。この講習を通じて、スタッフ全員が「もしもの時」に自信を持って行動できるスキルと心構えを深めることができました。患者様や地域の皆様に安心をお届けするために、今後も継続的に訓練や知識の向上に努めてまいります。

    お忙しい中、貴重な講習を行っていただいた救急隊の方に、心より感謝申し上げます。皆様が安全にご来院いただける環境を整えるため、引き続きスタッフ一同精進してまいります。