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Surgical orthodontics

外科的矯正治療

現在、患者様急増のため、新規の外科的矯正治療の患者様の受入れは一時中断しております。

外科的矯正治療とは?

外科的矯正治療とは
矯正歯科治療だけではなくあごの骨の手術を併用して、かみ合わせを改善する治療のことです。歯ならびだけではなく、上下のあごの骨の位置がずれていたり、大きさやバランスが悪かったりして、矯正歯科治療単独では改善が困難な場合に行います。

正確には外科的矯正治療と言うのが正しい言葉ですが、外科矯正と省略している場合もあるようです。あまりなじみのない手術や治療法のように思われる方もいると思いますが、口腔外科の中では、専門医の試験項目に入るほど、比較的ポピュラーな手術と言えます。

外科的矯正治療とは?

どのような患者様がこの治療法を受けているか?ですが、

  • 下アゴが出ている。しゃくれている(下顎前突症)
  • 下あごが後ろに下がっている、アゴがない。笑うと歯ぐきが目立つ(上顎前突症)
  • アゴが曲がっている(顔面非対称)

と言ったことを気にして来院される患者様が多いと思います。
不正咬合の中でも、骨格性不正咬合、つまり骨格の問題が大きな不正咬合に対して、適応されます。

外科的矯正治療の流れ

通常の矯正歯科治療に加えて、顎矯正手術が加わります。ただし、最初から手術を行うわけではなく、手術前に行う術前矯正治療と言うものが必要になります。そのため、術前矯正治療→顎矯正手術→術後矯正治療という流れになります。

  • 初診相談

    患者様の状態を診て、現在の問題点、考えられる治療法などを簡単にご説明します。また、手術を併用した矯正治療が考えられる場合は、手術についても簡単に説明します。

  • 検査

    問診、視診に加えて、レントゲン、歯型、写真などの必要な資料を採ります(約60分)。
    さらに2回目の検査で、あごの運動検査やあごの筋肉(咀嚼筋)の筋電図も採ります(約60分)

  • 診断

    問題点に対応したいくつかの治療方針をご説明します。この段階で、外科的矯正治療を適応するか患者様と相談します(約60分)。
    保護者の方や説明をお聞きになりたい方にも同伴して頂きます。

  • 口腔外科受診

    手術を依頼する口腔外科を受診して頂きます(当院で資料や紹介状を準備致します)。当院で提示した治療方針・手術術式などを口腔外科医に確認して頂き、詳しい手術の説明も行ってもらいます。また、必要に応じてCTなどの検査や親知らずなどの抜歯も行って頂きます。

  • 術前矯正治療

    月1回、10~24ヶ月程度

    手術を行ってあごをずらした時にかみ合わせが安定するようにマルチブラケット装置を用いて歯をならべます。
    そのため、術前矯正治療ではかみ合わせがむしろ悪くなり、咬みにくくなります。(月1回、30~60分/回、 10~24ヶ月前後)

  • 手術日程決定

    術前矯正治療のめどが立ってきた段階で、口腔外科を再度受診して頂きます。施設によって多少異なりますが、術前検査(心電図、血液検査、尿検査、胸部レントゲンetc.)、自己血貯血(術中の出血に備えて自分の血を採って貯めておくこと)などの処置を行い、数回通院して頂きます。

  • 入院・手術

    手術の数日前より入院し、手術を行います。
    術後の入院期間は早い人で5日程度、通常1~2週間となります。(術式や患者様個人の回復状態により異なります。また、施設によっても異なります。)
    以下の病院に手術を依頼しています(2014年現在)。
    ・横浜市大センター病院 歯科・口腔外科・矯正歯科
    ・横浜労災病院 歯科・口腔外科
    ・東京医科歯科大学歯学部附属病院 口腔外科外来
    ・北里大学病院 形成外科・美容外科

  • 術後矯正

    月1回、6ヶ月~1.5年前後

    手術で移動させたあごの骨は筋肉などに引っ張られて多少なりとも後戻りを生じます。後戻りを防ぎながらかみ合わせを落ち着かせるために、上下のワイヤーにゴムをかけてもらいます。
    また、手術で合わせきれなかったかみ合わせの微修正を行うことも術後矯正治療の目的です。
    (月1回、30~60分/回、6か月~1.5年前後)

  • 保定・観察

    2~6ヶ月に1回、数年

    かみ合わせがしっかりと出来上がり、あごの骨の後戻りも見られなくなったら、マルチブラケットを外して、取り外しのできる保定装置で経過を観察します。 2~3か月に一回、20~30分/回、数年

  • プレート除去術

    (希望により)

    手術であごの骨を止める時に用いたチタン製のプレートやスクリューを取る手術を行います。術後1年以降であごの骨の戻りが落ち着いた時期に行います。最初の手術と異なり、骨を削ったりするわけではありませんので、患者様の負担も入院期間も少ないものとなります。この手術は必ずしも全員の方が行うものではありません。口腔外科医の先生とご相談して決めているようです。

術前矯正治療の必要性

受け口など骨格的な問題がある場合は、体の自然な反応として、できるだけ反対咬合の程度が少なくなるように、上の前歯は外側に傾斜し、下の前歯は内側に傾斜します。これを専門的には歯性補償と呼んでいます。

前歯が歯性補償したまま、手術を行っても下あごを下げる量が少なくなり、顔つきの改善が期待できません。傾斜した前歯を適正な角度に改善することで、下あごを下げる量が増やすことができ、上下のあごのバランスを整えることができます。術前矯正治療が必要なのはそのためです。また、下顎前突症の術前矯正で上の小臼歯を抜歯する場合が多いのもそのためです。

矯正治療単独で改善する場合と歯を動かす方向が逆になりますので、治療を開始する前に手術をするか否かを決定する必要があります。

外科的矯正治療と通常の矯正歯科治療との結果の違い

  • 口元だけではなく、顔つきや顔のバランスが変化します。

    矯正歯科治療のみによる改善

    矯正歯科治療のみの改善では、骨格のバランスは変わりません。
    傾斜している歯の角度をさらに傾斜させて(上の歯はより外側に、下の歯はより内側に)、かみ合わせのみを改善することになります。
    そのため、顔つきの大きな変化は期待できません。

    外科的矯正治療による改善

    外科的矯正治療による改善では、骨格的に前に出た下あごを手術で根本的に改善するため、顔つきの改善が期待できます。

  • 歯が無理なくならべられます。

    骨格的に上下のあごのバランスが悪い場合でも、歯を傾斜させれば、ある程度咬み合わせは改善できます。
    ただし、歯ぐきの骨の上にまっすぐならんでいるわけではありませんので、若干無理をしてならべているとも言えます。
    外科的矯正治療では骨格的な問題を手術で改善するため、歯への負担を減らし、歯ぐきの骨の上に、歯を無理なくならべることができます。

外科的矯正治療(顎変形症)の治療費

顎変形症の治療では健康保険が適用されます。ただし、すべての矯正歯科で可能というわけではなく、顎口腔機能診断施設(一定の施設基準が必要となります)でのみ可能です(リストは日本矯正歯科学会のホームページで確認できます)。

初診相談時に「明らかに手術をしないと治らない」と考えられる場合は、最初から保険適用となります。しかしながら、多くの場合は本人の意思も含めて、 はっきりしていませんので、検査までは自費となります。治療方針を本人と良く相談して、外科的矯正治療を適応することが決定した時点で、「顎変形症」という病名をつけて、保険適用としています。また、検査を自費で行っていた方は、保険で計算しなおして、費用を精算致します。(検査から診断の治療費の精算方法については医院によって異なると思います)

症例によってかなりの幅がありますが、矯正治療の費用は3割負担で平均30万円前後です。
入院手術の費用に関しては、術式や入院期間によって異なりますが、3割負担で下あごのみの手術では25万円前後、上下のあごの手術では30~35万円前後です。ただし、高額療養費制度の対象となりますので、申請をすれば一部払い戻されます。

高額療養費制度について

  • 医療費の自己負担額が高額になる場合、月の初めから終わりまでで一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される制度です(入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません)。
  • 負担の上限額は年齢や所得によって異なります。
  • またご自身が加入している保険の種類によっても、問い合わせ申請先が異なります。

詳しくは、厚生労働省のHP(高額療養費制度を利用される皆様へ)をご参考下さい。

厚生労働省のホームページ資料より抜粋

よくある質問

  • Q.入院期間はどれぐらいですか?

    施設や術式によっても異なりますが、術後1週間から10日前後が多いと思います。手術2日前に入院することが多いですので、その日数を加える必要があります。

  • Q.手術までどれぐらいの期間がかかりますか?術前矯正治療はどれぐらいかかりますか?

    術前矯正治療では、手術をしてあごを動かした時にしっかり咬みあうようにならべる必要があります。抜歯をする、しないにもよりますが、10~24ヶ月前後だと思います。患者様からすると、手術までの期間はとても重要だと思いますが、歯の動き方については個人差が大きいので、予定より延長することがあります。

  • Q.手術のリスクは?

    手術を受けるにあたって、患者様や親御さんが最も気になるところだと思います。細かいことを挙げればきりがありませんが、施設によっても説明の仕方が若干異なりますし、ネットでリスクを調べて不安ばかり大きくなってしまうよりも、直接、話を聞いた方が良いと思いますので、ここでは差し控えたいと思います。ただ一つ言えることは、口腔外科の中では、日常的に行われていてそれほど珍しい手術ではないと言うことです。そのことで少し安心して頂けると思います。また、この手術は「やらなければいけない手術ではない」と言うことです。生死にかかわる病気なら、多少リスクがあっても受けざると得ません。しかしながら、顎変形症に限っては特に手術を受けなくても生きていけます。そういった意味でリスクのとらえ方が違うように思います。

  • Q.普通の歯科矯正治療でなおすのと何が違いますか?

    仕上がった形が全く異なります。骨格に問題があるものを骨格で治すのが外科的矯正治療、骨格に問題があるけれども、歯を傾斜させて、かみ合わせのみを治すのが普通の矯正治療です。外科的矯正治療ではお顔のバランスが変化します。

  • Q.外科的矯正治療では保険がききますか?

    顎口腔診断の施設基準を満たした一部の歯科医院もしくは大学病院等で保険適応が可能です。ちなみに、横浜市では39施設が指定を受けています(日本矯正歯科学会 自立支援・顎口腔機能施設リストより)。それ以外の施設では矯正治療は自費になってしまいますが、矯正治療を自費で行うと顎矯正手術も自費になりますので、費用が非常に高額になってしまいます。